「下町ロケット」が「半沢直樹」になれないワケ(ならなくていいワケ)

「下町ロケット」面白いですね。池井戸潤作品は「半沢直樹」ドラマのヒットから注目していて、日曜劇場シリーズについては「ルーズヴェルト・ゲーム」も含めて視聴しましたが、大人のおっさんの熱さを感じられるドラマとしてどれも高い完成度です。
主演俳優による長尺による名演説も多々あり、ほぼ毎話に一度は涙腺が緩むシーンが有ります。
高視聴率も獲得しており、一般的には成功の部類といえる作品ですが、その一方「半沢直樹」のように社会現象にまではならなかったり、流行語大賞にはなりませんでした。
もちろん、その「半沢直樹」が強すぎるということもあります。「倍返しだ!」というどまんなか流行語狙いの単語があったという理由がありました。
しかし、私にはもうちょっと根源的な理由があったと思っています……。

 

 

今思い返しても、「半沢直樹」は現代時代劇としてスカッとするシンプルな作りでした。

「5億円の焦げ付きを押し付けられた、上司の不正を論破し潰す」「伊勢島ホテルの再建を邪魔する上司の不正を論破し潰す」という、縦軸の明快さ。経済ドラマのメインターゲットである男性中年層以外にも、「逆転裁判」路線で抵抗感なく世界観が飲み込めるミドル層にも受け入れられた印象です。
その点、「下町ロケット」はどうでしょう。「部品のクオリティを滾々と説得し、逆訴訟を乗り切る」「緻密な検証を積み重ね、試験失敗の原因を突き止める」「臨床治験のサポーターを探し、ガウディ計画を完遂させる」という、サラリーマンであれば営業・調整面で毎日のように直面する問題のサクセス・ストーリーを描いているのです。
大人のおっさんにはこの展開が「やり遂げたなあ!すごいなあ!」となるのですが、それ以外の層にはピンとこないところがあるのは間違いありません。

 

半沢直樹のときは、世の中の変な勢いがついてしまったんです。実力以上に、周りが大騒ぎになった。あと、やっぱり子どもたちにも見てもらったのも大きかった。半沢直樹の決めセリフの「倍返しだ!」を真似したりして。そういう意味では下町ロケットは、子どもが見て面白いドラマではないですよ。
東洋経済オンライン 「下町ロケット」半沢と似て非なる熱狂の裏側 より引用)

 

このドラマは、明快に、堅実に、ターゲット層「のみ」を狙った、約束された勝利でした。
しかし、そこには「予想外の大勝利」は一欠片もなかったと言えましょう。
でも、こういう形で、堅実に名作を出し続けてくれるのであれば、日曜劇場というブランドは信頼に足るものだと思います。
今年のドラマで言えば「偽装の夫婦」の「ハグしてもいいか?もうしてるけどな!」というセリフのほうが、よっぽど「狙いに来ていた」ものでしたが、流行語大賞には上がりませんでした。
視聴率15%も十分な成功でしたが、それだけで流行語大賞は取れない。土台であるドラマのクオリティも十二分に求められるということでした。

 

私の父親が、時代劇を好んでいた理由がなんとなく、わかった気がしました。
そして私達の世代が年を経た時「時代劇」となるコンテンツは、現代なのかもしれません。
みんな、上司や大企業、だいっきらいなんですよね!

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