コナミの決算から見る、「紙」と「リンクス」の遊戯王のチカラ(2018年編)

毎度お馴染みの枕詞ではあるのですが、私はかつてコナミっ子でした。遊戯王を筆頭に、音ゲー・マジアカ・パワプロ等、コナミ発のコンテンツをこぞって愛し、特に遊戯王においては一家言あった時代もありました(過去)
しかし、今の私はそれについていってはいません。だから、カードゲームとしての中身を語ってもぺらっぺらのロジックにしかなりません。
しかし、私は経理で飯を食っています。その観点で語るうえにおいてはそうそうズレはしないと思っていることから、度々執筆させてもらっています。

リンク召喚の導入は劇薬でした。コナミの決算におけるデジタルエンタテイメント事業の屋台骨をどっちに転ばせてもおかしくない革命だったと思います。
実際その導入は、どう数字的に働いたのか。精査していきたいと思います。

 





アンケートのご協力ありがとうございました

この記事を執筆するために一つアンケートを採らせていただきました。
たくさんの方から回答いただき、本当にありがとうございます。


皆様各々この結果を見て感想を抱くと思うのですが、多数の人が抱くであろうポイントは「選択肢1〜3、意外と多くない?」だと思うんですよね。抱いてなければスミマセン。
私自身はもっと絶望的な結果(4が7割くらい)を予測していたんですが、記事を書く上にあたってコナミの決算を精査していったところ、すごく妥当な結果であると認識できました。

決算書から見る数字の分析を行ってみると……

どう分析すれば、紙の遊戯王やデュエルリンクスの事業への影響を確認できるだろうと考えました。
初めはデジタルエンタテイメント事業(以下、「同事業」といいます。)の業績推移を並べるだけでいいと考えたのですが、このやり方だと紙とデジタルが一緒くたに計上されていることから、増減が見て取れないんですよね。
そこで今回は会社全体の各クオーターごとの売上高と営業利益を並べ、利益率を見てみることとしました。このやり方は全事業をひっくるめた数字なので、本当に正しい検討ができるのか?と思われるかもしれませんが、同事業はコナミの50%以上を占めるコア事業であることから、そこで何かしらの変異があれば、少なからず利益率に影響が出てくるであろうという考えからです。

決算期間 売上(単位:百万円) 利益(単位:百万円) 売上総利益率(単位:%) 【参考】DE事業売上(単位:百万円)
2018年3月期第一四半期(2017.4〜6)
(※2017.3.25リンク召喚施行のため、ここから売上の影響あり)
55,743 12,196 21.8 28,914
2018年3月期第二四半期(2017.7〜9) 59,613 12,755 21.3 28,851
2018年3月期第三四半期(2017.10〜12) 63,312 13,581 21.4 31,890

(第二・第三四半期は決算短信上の数字から前四半期までの累計を減して算出(短信上は累計で表記されているため))

こう見ると誤差の範囲内の変動しかありませんね。当決算年度においては業績は安定しているもとと見られます。
次に考えるべきはデュエルリンクスとリンク召喚発表による事業への影響。デュエルリンクスが2016年11月17日リリース、リンク召喚の発表(厳密に言うと雑誌フラゲによりその存在が認知された日ですが)が2017年2月18日、正式実装が2017年3月25日であることを考えれば、このあたりで顕著な業績変動が起きているような気がします。
では、同様の条件で並べてみましょう。

決算期間 売上(単位:百万円) 利益(単位:百万円) 売上総利益率(単位:%) 【参考】DE事業売上(単位:百万円)
2017年3月期第二四半期(2016.7-9)
(リンクス無影響の最終フェーズ)
51,984 7,951 15.2 19,732
2017年3月期第三四半期(2016.10-12)
(当フェイズ期中に日本でリンクスリリース)
62,540 12,547 20.0 28,772
2017年3月期第四四半期(2017.1-3)
(リンクス影響を全期中受ける初フェーズ・世界でリンクス配信かつ、
リンク召喚発表による紙遊戯王の事前影響フェーズ)
65,981 6,772 10.2 31,907

目立つのが2017.1-3にがつんと利益率が下がっていることではありますが、期末フェーズであり、DE事業の売上高自体がむしろ増加していることを考えれば広告宣伝費や減価償却等、売上原価に絡む変動と考えるべきと思います。2017年2月18日を期に「そっぽを向かれた」としても影響はたった1ヶ月。フルに利益貢献するデュエルリンクスとのプラスマイナスを考慮すれば、売上が増えること自体は考えやすいところです。
そこから2018年3月期各四半期との売上を考慮すれば、驚くことに微減・微減・上昇と「底をついた」結果になっているんですよね。アンケートの結果的には合理性がある一致とみています。2017年秋口までに辞める人は辞めきって、訓練されたプレイヤーは継続する形になっている、という形で。
さらにいうと、2017年3月期第二四半期(リンクス影響がない最終フェーズ)と比較すれば、かなり売上は上昇しています。
これは、紙の遊戯王の売上減少を、リンクスによる利益でカバーしているどころか、稼ぎ頭になっているものでしょう。

当連結会計年度におきましては、モバイルゲームが好調に推移し、その構成比率が高まったことから、前連結会計年度比で減収増益となりました。
(2017年3月期通期決算短信より引用)

とあるように、モバイルゲーム事業の利益率は同事業内に比べても高いということは示されています。

冷酷だけど、正解を掴み取る会社であることは何度でも主張します

紙の遊戯王を楽しんでいるプレイヤーにとってはあまりにも残酷で冷酷な、欺瞞的ルール変更であったし、ほぼほぼ同時タイミングでリンクスを軌道に載せたことは、多かれ少なかれ、「元来の遊戯王をやりたいのならこっちへどうぞ」という動線を引いているようにしかみえません。
わかっちゃいるけど、その誘導が魅力的であるだけに、乗った人は多かった。だからこその、現在があるのだと思います。

で、コナミはマーケットを分析しているか心配していたのですが、そんなことは杞憂でした。してないわけがない、受け皿・コスト・リスクを精査した上で、当然の結果を出していました。

において、紙の遊戯王が仮に2位に落ちた際も、盤石な体制であろうことについては私も想像していたことから触れており、その後の未来で一度デュエル・マスターズにてっぺんを譲った際も、最終的には取り返していた。そのうえ、リンクスという軸も作り上げていた。
正直、玩具メーカーであるタカラトミーと、コングロマリットであるコナミには、その思い入れが違うような気がしてなりません。はっきりいって、コナミは利益さえ出せれば「素人が見る外っ面や短期的なマイルストーン」なぞはかなぐりすてて正解を取る企業ですので、結果TCG界で1位を取り返した件についても、コナミが一撃をかましたというより、タカラトミーが重さに耐えきれず再転落したという構図に見えてしまいます。

いまやTCG市場は遊戯王とデュエルマスターズが拮抗しており、順位変動は今後もままあると思います。
だけれども、デュエルマスターズはアプリ市場では戦っていない(アプリはありますが課金要素がないので考慮していません)。この差は大きい。ここからデュエルマスターズがさらに市場に一撃を加えようとしてアプリをリリースする頃合いには、コナミは何かしら次の一手を用意している気がしてなりません……。

少なくとも、遊戯王プレイヤーの皆さんは安心していいと感じています。
なんてったって、紙の遊戯王がない限り、リンクスも「弾」が用意できないんですから。
また、容易に紙の遊戯王事業から撤退してしまうと、リンクスへの信頼性も揺らぎますから。6000万ダウンロードをされているゲームが、そんな簡単に手放されるわけがない。
相互補完の関係性から未来は安泰です。

コナミっ子としては、悔しいですけどね?

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