圧倒的異端 「名探偵コナン ゼロの執行人」感想

真実は、いつもひとつ……?

毎年のように邦画のヒット作として春口に放映される「名探偵コナン」シリーズ。
漫画としては超長編としてあまりにも有名で、私自身全てを読んでいるわけではないのですが、いわゆる「要所」を押さえている程度でした。
コナンがヒット作ということはわかるのですが、映画については実はほとんど見ていませんでした。それこそ子供の時にやっていた「時計じかけの摩天楼」とかをテレビ放映した時に見る程度で、映画館に通ってまで見るという習慣はこの作品についてはありませんでした。
ただ、今年のは違和感があるくらいSNSがガヤガヤしていた。ネタバレを避けた程度の感想を見ても、「公安」「司法」「政治」が入り乱れるポリティカルな話だと、「それコナン!?」みたいな感想が飛び交っており、「相棒」とか「小さな巨人」その他組織紛争……いわゆるポリティカルサスペンスが好きな私にとっては興味があったので、今回については見に行きました。
ここから先はネタバレ、ある程度あります(予告映像にあるシーンは堂々と表現します)。できれば、思いを共有したいから、是非ともまずは映画館に足を運んでほしい、それから見てほしいですね。損はさせません。

想像以上に「公務」をロケーションしていた

いや、正直びっくりしました。「公安警察」「公安検察」「公判及び公判前整理手続」「刑事訴訟法」等、刑事訴追に関する手続きを本来は子供向けであろうアニメで説明テロップすらなくどんどん仕込んでいく。
これは正直、本来の対象年齢にはきついでしょう! 尺の問題もありますが、そこに関しての一切の手加減がないことは、映画館に入る観客の頭に???が浮かんでいたのか、若干前半パートは映画館がガヤガヤしていた気がします。
後半はまさに「コナン」! 爆発もあり、カーアクションあり、推理パートあり、ダブル主人公としての安室の見せ場ありと、本来求められている需要の幕の内弁当で、顧客満足を十二分に満たしていました。

コナンである必要はあったのか

ここまでの感想を見た人は若干思っているはずなんですよね。前半のポリティカルサスペンスは必要だったの? 単純にコナンコナンしておけばより好評だったのに、搦め手に走る必要はあったの?と。
結論として、これは「必要だった」。いくつもの大枠の縦軸をおっ立てておくことで後半の展開を上手くカモフラージュしていた。
毛利小五郎が逮捕されるという展開についても、こうでないと着地できない理由があった。名探偵コナンという設定と安室という公安の立場を考えた、「とりあえずインパクト」みたいなプロットではありませんでした。その一方、ちょっと調理すればそのまま刑事ドラマでもイケるプロットでした。後々調べれば、今作の脚本家は「櫻井武晴」という方で、調べてみれば「相棒」や「科捜研の女」「ATARU」等、警察作品を主軸とする脚本家の方でした。「言われてみれば、これ映画版相棒だよ(笑)」みたいなトンデモ展開が確かにありますあります!
最後半もなかなか超展開ですが、これはどう考えても昨年の「シンゴジラ」がハマったからぶち込んできたカットはありますね。なかなかコナンで「総理! 破壊措置命令を!」はこれまではなかったなあ(笑)

「僕の、恋人は、―――――」


放映前トレーラーでも取り上げられてた安室のこの台詞。
どうキメてくるのかな、と後半昂ぶっていたのですが、その瞬間「そうかー そうきたかー!」でした。
婦女子を落とし、男性にも惚れられる。安室というキャラクターを象徴する見事なカットでした。素晴らしかった。


(↑ PVでもありますが、この安室の表情いいですよね。死線を感じ取る余裕がない表情ながらも、そこにはその状況を楽しんでいるかのようなエキセントリックさも見て取れる。スゴい表情です)

今年、このリアル日本が「こうなってる」状況で、「こういった」作品を放映する。
去年のシンゴジラもそうだったんですが、昨今の東宝の切り口はなかなかシニカルなところが憎いですね。

「真実」「正義」ってなんなんだろうか。視聴者は全てを知ってなお、安室はイケメンだからこの展開でも「赦される」のか? 視聴者は「赦す」のか?
普段コナンを見ない方も、是非とも見てほしい。今年を代表する一本となって、差し支えないと思います。

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